現代は広告や拡声化した演説、SNS通知など“侵入的な音”が「わからせるスピード」で個人に食い込み意思決定を奪うように感じる。私はその暴力性を嫌悪しつつ、唯一〈自分で選び場で共有される〉着信音に、言葉を介さず他者と共鳴する可能性を見いだした。そこで本作では、着信の瞬間に音が場の一点に集まり人と場を“同次元化”することを目標に、低音×高音、差音、微小遅延で奥行きと超低域感を設計し、意図的な無定位感と交響詩的な響きで“刺さらずに浸透する”他者性を実装した。
 類似の表現としてASMRが一対一の親密さを主眼とするのに対し、本作は自己・他者・周囲が溶け合う「場の親密さ」を立ち上げ、通知を注意の奪取から共鳴の起点へ更新する。産まれたばかりに聞こえる音や、哀愁のある音を入れ込み、理性を解除し、本能を誘発し、初期試作で生じたホラー的暴力性は音色・立ち上がり・余韻の再設計で解消した。結果として、他者性をひっそり流入させ境界をやさしく溶かす“同次元吸引力”を最大化し、未知の他者—たとえば異次元のエイリアン—さえも深い次元で共鳴しうる、新世代のコミュニケーションを社会に提案する。

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